ガチャ。 「ママァー?」 「せいちゃんどぉしたの?」 「いまママによばれたきがしたのー。」 「ママいるの!?」 「んーん。いなーい・・・。」 「そっかぁ・・・・・。」 「そうちゃん。ぼくがいるからだいじょうぶ!」 「うん!だいじょうぶ!!」 慎はドアの奥から近付いてくる足音を聞いて、これより更に不利になる状況から脱していた。 (危ね・・・) 「・・・・んーーー!!」 「あぁ、悪い。」 「それはどっちに対して謝ってるのかしらね?」 「・・・・・・・。」 「アナタよね?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・まぁ。」 その小さなつぶやきを耳にした瞬間、玲は慎の肩を思いっきり掴んだ。 女性らしく長い爪が食い込んで地味に痛い。 「・・・か、肩・・・・」 「どうしてかしら?」 「は・・・・・。」 「どぉしてわたしの邪魔をするのかしら。」 笑顔が素敵なくらいにキラキラしていた。 テレビの前では女優として、タレントとして時折見せる笑顔だが、家族間でこのようなキラキラしい笑顔をする時は いつも同じである。 「そ・・・・」 「ま・さ・か、クリスマスはサンタさんがプレゼントくれる日って信じている晶志が聞いてきた、なんてことは言わないわよね?」 「・・・・・・。」 とっさの言い訳を言う前に当てられ、口をつぐむ。 今の彼女は無敵だ。 例えて言うなら、今から冒険に出ようという勇者の前にいきなり最後の最後のラスボスが出てきた感じだ。 「『そ』の後は?続きをどうぞ。聞いてあげるわ。」 為す術無し。 絶体絶命。 言い訳よりそれらの言葉が頭を巡る。 ぐずぐずしている慎に玲は細く目を開けて威圧する。 (ラスボスが勇者の剣を手に入れてまさに絶体絶命・・・・・。) 訳のわからない言葉が浮かんできた時点で慎はもうダメだと悟った。 NEXT? |